早朝、廊下に出た際
いつもの隙間で、仰向けに眠っていたクマ。
口角が上がり、顔がニヤケて見える。
いつ見ても、ふざけた格好だ。
夜が開ける前の、蒼い光に包まれる時間。
思い返すと、私はこの時
ナニカの予感を感じていたのかもしれない。
朝、叔母から兄に電話が入る。
(急に居なくなったら、悲しむよ・・・・)
階下から、母と兄の会話が聞こえる。
決まったのだな。
先日の電話で、心づもりは出来ている。
だがしかし、
当初の『3ヶ月は母犬と一緒に居なくては・・・』との叔母の言葉は何だったのだろう。
何か釈然としないが、とにもかくにも、今日が旅立ちの日だ。
時間はあまり無いだろう。
デジカメ2台、携帯カメラも装備して、犬達と遊び、撮りまくった。
小躍り
エイッ!
忘れないでね
いつもと違うヒト達の雰囲気に、何処か違和感を感じていたのだろうか?
今見返すと、クマのピンショットは何処か寂しげに映る。
窓辺に並ぶ
ヤンチャボーイズのこの姿も見納めか。
クマを抱き上げ
トロリと溶け、零れ落ちそうな柔らかな躯を、ギューギュー抱いて
彼特有の、プニプニの前脚をニギニギした。
明るいお前が居なくなると、寂しくなるよ。
その明るさを炸裂させて
アチラの先住犬のジジ達の活力を引き出すんだよ。
良い子で元気にやるんだよ。
毎月会いに行くからね。
夕刻、彼は新たな家族の許へ旅立った。
母方の親戚である事。
先住犬達の環境もよく知っている事。
安心して委せられる場所への旅立ちではあるが・・・
一番明るいクマの旅立ちは、思いの外心に応えた。
静かな雨音が、胸に染み入る。