興奮冷めやらぬまま、明け方の就寝となった。
早朝、道行く人達と母の会話がぼんやりと聞こえる。
『生まれた?』
「はい、生まれました。」
『ホゲホゲ?・・・・・』
「フガフガ・・・・・」
何故、皆知っているんだ?)
まどろみの中で、疑問を感じていた。
どれくらい眠っただろう。
母が私に声をかける。
心配そうな、そして緊急を帯びた声だ。
『一番小さい子が、動かないみたいなんだけど・・・』
言葉全部を聞き終えない内に、飛び起き部屋を出る。
母の話もそこそこに、兄部屋の産室へ駆け付ける。
『ホタルの後ろ側にいるんだけど、押し潰されてしまったんじゃ・・・』
産室へ入り、長女を確認。
静かだが、ちゃんと息をしている。
躯を触っても、痛がる素振りは無い。
小っちゃく丸くなって、よく眠っていただけだ。
無事を確認すると、ほぇ〜っと息が抜けた。
は、と見れば、ホタルは何事かと怪訝な顔をしている。
時計を見れば、まだ就寝から2〜3時間・・・。
母も子犬の誕生を喜び、また、気に掛けている。
「大丈夫だよ。
ホタルは子犬を踏まない様に、ちゃんと確認しながら守る様に伏せているし
もし踏まれても、子犬がありったけの声で抗議するから。
でも、例えもしもの事があっても、それは逆らえない。」
ホタルの母性を信頼し、任せているのだ。
皆心配だし、ホタル自身も慣れない事に不安を感じているだろう。
でも、人の介入が過ぎるのは、どうかな?と思う。
ホタルは誰に教わった訳でもなく、立派にお母さんをやっている。
子犬達にも、生きる為に必要な本能が備わっている。
相手を信頼して、任せる。
着かず離れずの距離を保って、必要な時、手を差し伸べれば良いと思っている。
心配し過ぎない、放ったらかしにもしない。
バランスが難しいところだね。
今は皆、ピリピリしているけれど
少しずつ、そのペースが解って来るだろう。