Madam Aが泣きそうな声で私を呼ぶ。
メジロがガラスに激突してグッタリしているとの事。
そりゃ大変だ。あの番の片割れか？
大事そうにメジロを包んでいるMadam Aの手が震えている。
包んだ手をそっと開けると
目を閉じ、くちばしを開けて喘ぐ小さなメジロの姿が。
足に力無く、自力で立たない。
（脳しんとうか？）
メジロを受け取ると、体温が掌に伝わってきた。
片手の半分にも満たない小さな体だ。
足を触ると少しだけ反応する。
（まだ、イケるか？）
そっと、本当にそっと頭を撫でると、目を少しだけシバシバさせた。
（さて、どうする？）
暫く様子を見ていると、「ン？」
掌に脱糞である。
「おまえな〜余裕ブッこいるな〜」
などと思いつつも
もしかしてメジロにとって『良い兆しかも？』
そして私にとっても「うん」がついたかも？（苦笑）
冗談はさておき。
「うん」の処理をしてから、暫く掌で暖める。
くちばしも閉じ、いくらか目がしっかりしてきた。
しかし足に力が戻らず、羽ばたきもしない。
手近な小物入れの中に、細く千切ったティッシュを入れ
そこへメジロをそっと入れるが、チンマリとうずくまってしまう。
記憶呼び戻し作戦決行。
ミカンを切って小物入れの中に入れてみる。
「ホラ、ミカンだよ、匂い分かる？
しっかりしなよ。
オマエはどっち？『ガツガツちゃん』？『おっとりチャン』？
相方が（多分）心配してるよ。
相方とミカン食べるんでしょ？
元気出して相方のところへ戻らなくちゃ。」
言葉が通じるとは思っちゃ居ないが、他に何ができると言うのだ。
『声をかけて励ます。そっと手で触れる。（すなわち手当）』
これはどんな生き物の間でも通じる愛だと、私は信じる。
は！語ってるよ・・・。
羽の具合を見るために再度メジロを手に取る。
野生の目の力が戻っていた。
首の動き、目の動きに鋭さが戻っている。
（良いぞー！）
そっとそーっと片側ずつ羽を広げる。
左、右と広げたところで、バタっと羽ばたきの素振りを見せる。
（良いぞー！！）
再度左。バタバタっ。
その直後、ピョンと飛んで
先程自分が収まっていた小物入れのふちに停まる。
足元もしっかりしている。
まだ自分に何が起きたか解っていないみたいで
少しだけポーッとしてるが、大丈夫そうだ。
よし、この間に写真を撮らせてもらおう。
2枚、3枚、4枚・・・あぁ！なんてこった！電池残量が少ない・・・
と突然、部屋中を飛び回りはじめたメジロ。
アタフタと窓を開けて外への道を作る。
またガラスにぶつかると大変なので、閉まっている窓にはカーテンをした。
リビングをバタバタ、キッチンをバタバタ・・・
アレ？消えた。どこだ？
ムッシュMを含む3人での大捜索。
ガスコンロの中に潜り込んでいたメジロをムッシュMが発見！
火が点いてたら、焼き鳥になっちゃう！！！！
ホラホラお前の帰る場所は外だよ。
飛び回っては壁に停まり、換気扇カバーに停まり、吊り戸に停まり
出口を見つけられずに居る。
心苦しいが追い立てると
すっと真直ぐに、空いた窓から外へ飛び立って行った。
ちゃんと相方の所へ戻るんだよ。
暫くして
庭に目をやると、ミカンをついばむメジロが一羽。
あのコかな？相方は？
確認する術も無く、見ているうちに、飛び立ってしまう。
その後また暫くして
ミカンをついばむメジロが一羽。
こちらの存在に気付くと、ミカンを食べるのを止め
ずっとこちらを見つめている。
私はこのメジロが激突したメジロだと、勝手に思った。
そうであって欲しいと言う気持ちからだったのかな？
（お前さんかい？もう大丈夫？相方は？）
後方から別のメジロが飛んできた。
はいはい、ゴチソウサマ。
この番のうちの片方が、あの激突メジロだという確証は無いが
なんだか少し、ホッとした。
エゴかもしれないけどね。
どこかで元気で居て欲しい、と願って止まない。
参考
鳥獣保護法により、捕獲を認められた狩猟鳥獣以外は
原則として捕獲してはいけません。
メジロは、この捕獲可能狩猟鳥獣リストには入っていません。
つまり、捕獲してはいけないと言う事。
詳しくは「日本野鳥の会」などを参考になさってください。
今回は、弱っているメジロを一時的に保護したので
「捕獲」ではありません。
誤解が生じるのは不本意ですので、念の為。
